『名も知らず』 |
事が済み、気だるい心地良さに全身を預けながら、角松は腕の中の存在を見つめる。 距離を置こうとしているのか、終わったらすぐにでも、この手から逃げ出してしまいそうな人を、必死に繋ぎ止めるかのように、強く抱きしめながら。 こんな時の如月は、敢えて抵抗はしないけれど、決して全てを許している訳でもないことが、硬く張りつめた頬の線で分かる。 笑ってくれよ、と思いながらも、そんな冷たい横顔もまた、近寄りがたい美しさを伴っていて心惹かれてしまうのだから、末期的だろう。 なぜ彼が身を委ねてくれるのか、理由は分からない。俺の魅力だ、などと自惚れられるほど尊大でもない。 ただ分かっているのは、どうやら如月は『初めて』ではないらしい、ということくらいだ。角松は男を抱いたことがある訳ではないから、あくまでも想像の範囲ではあるが。 だから、もしかしたら。 ただ単に、人恋しかっただけなのかも知れず。 一人寝が寂しいというだけかも知れず。 誰でも良くて、ちょうどそこに角松がいた、ということに過ぎないのだとしたら。 それは少々悔しくもあるけれど、正直にその想いを暴露して、みすみす如月を手放せるほどの余裕もない。 如月のきまぐれを、好都合だと受け容れることしか出来なかった。 恋だとか、愛だとか。 そんな感情に溺れられるほど若くはない。 しかし、単なる性欲だけではないのだろう。 抱いた後も、いや抱いた後こそ、この人を手放したくないと思うから。 この感情の名前は、…まだ知らない。 おわり |
ここまで読んで下さってありがとうございましたm(_
_)m
クサくても、突っ走ります、ジパングは。 川柳っぽく(笑)。 基本的に、私はラブラブ推奨で、 愛のないカップリングを書くのは苦手なのですが、 この二人に関しては、微妙ですね(苦笑)。 愛があるような無いような感じですが、 多分、あります。 とはいえ、この先ちゃんとラブになるかどうか、 自分でもよく分からないのですが…。 如月サンの 片思いになりそうな気配が(笑)。 2005.02.09 |