【えせほし─似非星─ 】 kyo-ko

『飽くことなく』




 この腕の中で抱かれている如月は、他のどんな時よりも美しいと思う。
 出会って間もないうちに肌を合わせて以来、溺れるように貪るように、毎夜、如月を抱き続けてきた。

 どれほど抱いても飽きることがない。
 もっと、もっと欲しいと思う。

 自分にこれほどの欲望が宿っていたのか、と驚くほどだ。


「美人は三日で飽きると言うが」
 如月の端正な横顔を見つめながら、角松はつぶやく。
「あんたに関しては例外らしい。見飽きることがない」
 それは偽らざる気持ちだったのだが、如月は不審げに眉をひそめた。

「何だ、それは…」
 こんな俗諺を聞いたことがなかったのか、あるいはこの時代では使われていないのか。不思議そうにする如月が可笑しかった。
「あんたが美人だって話さ」

 重ねるように臆面もなく言ってのけると、如月の表情はますます曇る。角松の言うことが心底から理解出来ない、という風情だ。照れている訳でもなさそうである。
「ん?どうした」
「私はそんな風に言われたことはない」
 困惑を顔に貼り付けたままで、如月はつぶやく。

「そりゃあ、あんたの周りの男どもが見る目がなかったんだろ」
「あなたの方が、他の人と感覚が違うのではないのか?」
 そう言われ、角松はなるほど、と思った。この当時と角松の時代とでは美人の定義も違うかもしれない。


 だとしても。
「俺があんたを美人だと思うんだから、それで良いじゃねえか」
「…理解できないな」
 応える如月の表情はやはり険しかった。自覚がないのだから無理もない。

「それなら朝から晩まで、きれいだと言ってやろうか? そのうちに慣れるだろ」
 現実問題として、角松はそれほど舌が滑らかではないから、言えるかどうか怪しい所ではあるが、それくらいの気持ちではある。
 すると如月は珍しく頬に朱を上らせて、目を逸らした。
「馬鹿を言うな」

 …そんな顔もやっぱり美人だ。

 角松は思ったものの、また口に出すと如月を困らせるだけだろう。
 そこで想いを伝えるかのように、細い身体を引き寄せて、熱く口付けるのだった…。

          おわり

ここまで読んで下さってありがとうございましたm(_ _)m

すでにバカップルですか、この二人(苦笑)。
まー、でもおそらく角松氏は美人になつかれて、
慣れないことに舞い上がっているだけですね。

如月さん視点の話も書きたいのですが、
気がつくと角松視点。なぜだ…。

本当はクールな一面を覗かせつつも、
次第に角松氏に惹かれて行く如月さん…、
なんてのを書きたいんですが。
頑張りまっす。

それから、如月さんはどの時代でも美人サンだと思います。
周囲の人もそう思っていて、少なからず態度に表しているのに、
如月さんだけが気付いていないんですね。
ちょっと天然姫(姫言うな)。
私の描く如月さんはそんな人です

2005.02.17

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