『好奇心』 |
その任務について聞かされた時、頭をよぎったのは、ただ一言。 面倒なことになった、という、それだけ。 上官でもあり、それ以上に恩もある人からの命令に逆らうことは出来ないが、どうせなら、他の人に代わってもらいたかった。 話を聞いただけでは、にわかには信じられなかったし、実際の目で見たとしても容易には受け容れがたいだろう。なぜあの人が素直に信じたのか不思議なほどだ。 …未来からの客人とは。 それとも、この目で見れば、その理由も分かるだろうか。 不安と期待、それからほんの少しの憤り。そんな複雑な想いを抱えた如月が出会った男は、意外なほどに、まともだった。 もちろん如月も、いくら60年後の人間とは言え、自分と同じ人間であるからは、さほどの差異はないだろうとは承知していたつもりだったが、かなり背が高くて身体つきが良いために人目を引きはするものの、それ以上の目立った特徴はなかった。 少なくとも一目見ただけで、自分と違う、と思うような所は。 だから、余計に気になったのかも知れない。 この男はどんな風に人を愛するのだろう。 未来から来た男は、自分をどんな風に抱くのだろうか。 それは、ただの好奇心。 最初のきっかけは、そう。…ただ、それだけだった。 如月とて、誰彼かまわず足を開く訳ではない。任務でそれが必要とあらば、虫唾が走るような相手にも身体を許すことはあるが、個人的に抱かれても良いと思える存在は、ほとんどいなかった。 しかも、こういう真っ直ぐな目をした男は、本来は苦手な部類の筈なのだ。心の奥まで見透かされるようで、嘘が吐けない。快楽を味わうためなら、楽しむだけなら、わざわざこんな男を相手にする必要はない筈なのに。 気が付いたら、自分から男を誘っていた。 男が乗ってこなかったら、それであきらめるつもりだった。無理強いをするつもりはなかったが、男は意外なほどに容易く落ちた。 そのことに、身勝手にも、ほんの少し落胆した如月だったが、それもすぐに男に抱かれているうちに忘れ去った。 それほどまでに男の腕の中は心地良かった。男の愛撫は、これまでに味わったことのない優しさだった。それでいて最後には、自分を見失うほどに激しく突き上げられた。 遠ざかりゆく意識の中で、頭をよぎったのは、ただ一言。 深みに嵌りそうだ、という、それだけ。 躰が、あるいは心が…? 如月には分からなかったけれど、この任務を与えられて良かったと思った。この人に会えて良かったと。 たとえ、いつか未来に還っていく人だとしても…。 おわり |
ここまで読んで下さってありがとうございましたm(_
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如月さん、そこまで好奇心旺盛じゃないだろ、とも思うのですが。 ほとんど他人に関心もなさそうな彼が、 角松氏にはかなりこだわっていますよね。 やはり特別な存在なんだろうなぁ、と思うのです。 それに角松氏はいくら如月さんが美人サンでも(笑)、 初対面でいきなり押し倒したり出来ないでしょう。 ヤルにはやはり如月さんから誘ってもらわなくては。 という訳で、ちょっと似非っぽい如月さんですが、 こういう人には誘い受けが似合うと思いません? いや、初対面の角松氏に押し倒されても きっと拒まなかっただろうけどね (爆)。 2005.03.05 |