「はい、御剣、コーヒー入ったよ」 「ム……、私は紅茶党だと言わなかっただろうか」 「あれ?そうだっけ。ゴメンゴメン。 でもせっかくだから、冷めないうちに飲んでよ。 別に嫌いなワケじゃないんだろ?」 「このコーヒー、砂糖とミルクが入っているようだが?」 「うん。御剣は、紅茶はストレートで飲んでいるけど、 コーヒーにはいつもいろいろ入れているだろ。だから」 「君はそこまで私のことを……」 「人間観察は弁護士のキホンだからね」 「……すまない」 「どうしたの?」 「私は別にコーヒーが嫌いなワケではない。 むしろ君に入れてもらって嬉しかった。 それなのに、どうしてああいう言い方しかできないのか……」 「あはは、そんなの簡単だよ」 「……ム?」 「そういう時はね、すまないじゃなくて、ありがとうって言うんだ。 それだけで伝わるからさ。少なくとも僕が相手だったら」 「そうか……、ありがとう、成歩堂。 君には教えられることが、たくさんあるな」 「それじゃ次は御剣が、 僕に紅茶の美味しい飲み方を教えてくれる?」 「ムロンだ。異議はない。それではさっそく2杯目は紅茶で」 「あ……、えっとゴメン。実は紅茶の葉っぱを切らしちゃっててさ。 だから仕方がなくコーヒーを出したんだけど。 怒られると思っていたから、 なんか予想以上に感謝されて嬉しいような、申し訳ないような」 「やはり……、相変わらずだな、君という人は」 おわり
読んで下さってありがとうございます。 ナルホド君はさりげない優しさや、 気配りの出来る人だと思っています。 でも御剣さんはそのことに気付いていなくて、 だいぶ経ってから、そういえばあの時……、 なんて思い出したりするんですよ。 そしてナルホド君にキュンとしちゃうんですね。 御剣さん、ちょろいな(苦笑)。 とはいえ、これで紅茶を出したとしても、 あれこれ文句を付けるだろうな、御剣さん。 だからコーヒーで、良かったんだよ、きっと。 2013.08.07