ホイッスル

「テクニシャン」

 




「ちゅ……んっ……、くちゅ……ん……ちゅぱ……」
 淫靡な音を立てながら、屹立するそれを舐め回している少年を、松下は苦笑しつつ見つめる。
(ずいぶん上手くなったよな……)
 最初の頃はたどたどしかった舌使いも、いつの間にか上達して、今では気を抜くと、そのまま口の中に出してしまいそうになるから困る。

 まだ中学生の少年に、こんなことをさせているという背徳感も、コーチと教え子の関係であることの罪悪感も、最近はすっかりおぼろげだ。
 とはいえ犯罪であることには変わりなく。
 愛し合っているから、という理由だけで何もかもが許されるとも思っていないけれど。


「……っちゅ……く…ん……、おっさん……?」
 松下自身を口に半分頬張りながら、シゲはうっそりと顔を上げる。上気した頬と、とろんと潤んだ鳶色の瞳が妙に艶めかしかった。
「あ、ああ……、何だ?」
「何だ、やないやろ。てんで上の空やん。それとも良くなかったん……?」
 途端に不安げな表情を浮かべる少年に、松下はそっと首を横に振る。

「そんな訳ないだろ。すごく良いよ。ただまぁ、そこまでしてもらわなくても……、とは思うな。無理してんじゃないのか?」
「無理なんてしてへんよ。ただオレはこのくらいしか出来ひんし」
「……このくらいって……」
 松下は深い溜め息を落とす。

 どう考えても15歳の少年が、こんなテクニックを身に付けてしまうことを『このくらい』とは言わないだろう。
 それこそがシゲの松下への想いの証しであり、松下を自分の元へ繋ぎ止めるために、必死に覚えた手管なのだとも分かってはいるが、さすがに素直に悦ぶことは出来なかった。


「……もう良いよ、十分だ」
 金の髪をくしゃりと撫でて、松下はシゲの顔を上げさせる。それでもシゲは戸惑ったようにつぶやくばかりだ。
「そやかて、まだおっさんイッてへんやん」
「だからってな、お前の口の中に出したくはないんだよ」
「オレはかまへんのに」
「俺が構う」

 松下がきっぱりと言うと、今度はシゲが溜め息を落とす。
「あのなぁ、頭の硬いおっさんは、オレが嫌々やってるんと思てんのかもしれんけど。舐めるのもしゃぶるのも気持ち良いんやで?」
「え……?」
「それに、オレはおっさんのコレも好きやしな」
 そう言うと、シゲは松下自身の根元から先端までを、赤い舌でべろりと舐め上げる。その表情はまさに恍惚としていて、シゲの言葉が嘘ではないことが知れた。

「シゲ……ん……っ」
「オレの愛撫でおっさんのコレが硬く大きくなってくれたら嬉しいし、感触も匂いも舌触りも好きなんやもん」
 とんでもない発言をしながらも、シゲの舌使いはますます激しくなってゆく。やはりテクニックはかなり上達していたようだ。


「こら……、止めろ……、も……出……っ」
「ん……っちゅ……ぅ……、出して……ええよ。おっさんの……、飲みたい」
 がつんと頭を鈍器で殴られたような衝撃が走る。この子悪魔をどうにかして欲しい。
 軽い目眩を覚えるが、それでももう松下も欲望に抗うことが出来なくなった。

「く……ぅ……っ」
 熱い吐息と共に、とうとう射精してしまう。すでに頭の中は真っ白だ。
 するとシゲが抗議の声を上げた。
「ああ、もう。イク時はイクって言わなあかんやん。ちゃんと飲めへんかったやんか」

 その言葉に釣られるようにして目を開ければ、なんとシゲは顔中を精液まみれにしていた。滑らかな白い肌も、きらめくような金の髪もドロドロのベタベタで、せっかくの美少年が台無しだ。
 いや、そうではない。
 そんな状態であっても、シゲはいつもに増して美しく、それ以上に妖艶で淫らだった。どんな美女でもこれほどまでの色気を醸し出すことは出来ないだろう。


 おそらくは大人でもなく子供でもない年齢特有の危うい色香、数年もすれば儚く消えてしまう美しさ故だ。
(天使を穢している悪魔みたいなもんか……?)
 自分で考えながら、あまりにも陳腐で笑ってしまう。
 しかも当の本人は何ら悪びれることなく、無邪気な仕草で顔に付いた精液をぬぐっているから、余計に始末に終えない。

「ほら、成樹。こっち来い」
 注意を引くように、あえて名前で呼んで、両腕を広げると、シゲは嬉しそうに松下の胸の中に飛び込んできた。こんな所は仔犬のように可愛らしい。
「おっさん、大好き」
「俺もだよ」

 愛の言葉をささやき合って、甘いキスを交わして。
 射精後の気怠さも相まってか、うとうととしてしまった松下の耳に、シゲの不満そうな声が響いてくる。
「ちょ、おっさん。まだこれからなのに、寝るなや」
「……何言ってる。さっきまで散々ヤッただろ。これ以上はお前が明日、足腰立たなくなるぞ」
「そんなヤワやないし」

「とにかく却下だ。もう寝るぞ、おやすみ」
「ええー?! そんなん無いわ。おっさんのアホー!」
 シゲは腕の中でジタバタと暴れているが、文字どおり『おっさん』の松下は、中学生の体力に付き合う余裕なんて無い。
 何を言われようとも、断固として拒否する松下なのだった……。



                おわり



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ここまで読んで下さってありがとうございます。m(_ _)m

なんかエロイ子の話が書きたかったんです。
でもうちのサイトだとシゲちゃんくらいしか居ないし。
という訳で、誕生日恒例の更新に、
こんな話を出してしまいました。すみません(苦笑)。

それにしても、シゲちゃんが相手だと、
松下のダメな大人っぷりがヒドイ(笑)。
自業自得とはいえフォロー出来ませんわ。

でもここであんまり松下を悩ませると、
まだメソメソした話になっちゃうし。
お題ですからね。
割と気楽に楽しくやる感じで。

2013.07.06


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