【えせほし─似非星─ 】 kyo-ko

『あんたという人が、自分だけのものになればいいのに』


 それは、当たり前のように、ずっとそこにあった……。

 その存在が気になりだしたのは、いったい何時のことからだろう。

 節くれ立った男の太い指には、あまりにも似つかわしくないように見えるそれは、長い時間を掛けて、ゆっくりと馴染んでいったのか。
 今となってはもう指の一部であるかのように、そこに存在していたから、ずいぶんと気付くことは出来なかった。

 しかし、一度認識してしまうと、今度は目を離すことが出来なくなった。

 それは男を縛り付ける銀色の鎖か、それとも誰かの所有物だという認識票か。おそらく男は、自分が意識するほど、それを気に留めてはいないのだろう。
 そしてそれこそが、男の指にそれが存在していた時間の長さを思い知らされて、どうしようもなくなるのだけれど…。


 外してくれ、と。
 自分のためにそれを外してくれ、などと言う権利はない。
 たとえ在ったとしても、そんなことが出来よう筈もない。

 そしてまた。
 自分のために、新たな銀の鎖を付けてくれ、と願うことも出来ないから。


 男が自分の頬に触れ、髪を撫で、肩を抱き、指を絡める…、その左手の薬指は決して見ないようにして。
 目に入ってしまっても、ただじっと唇を噛みしめて耐えるしかない。
 傍にいてくれるこの人が、自分のモノではないのだと、思い知らされても、白旗を掲げることしか出来ないのだ。

 ──その銀色の指輪を前にしては……。


               おわり
ここまで読んで下さってありがとうございましたm(_ _)m

行が乙女です(笑)。
お題ではこの路線で行こうかな。
というか、意識しなくてもそうなっちゃうんですけどね。
モノローグだと乙女度が高くなりますわ。

何故だ。
私自身には乙女要素なんて全然ないのにな。
あ、だからこそ?(笑)。

えーっと、中身については特にコメントなし。
とりあえず、さっさと指輪外せよ、仙石さん(爆)。
仙石さんって指輪しそうなタイプじゃないですが、
ネタとして使えるので、ウチでは指輪している設定です。
ええ、そんな理由。

2005.06.27

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