【えせほし─似非星─ 】 kyo-ko

『泣かせたい。泣いてほしい、俺だけのために』


 ──血も涙もない、という言葉がある。

 おそらく、如月行はそんな人間だったのだろう。
 いや、そうあろうとし、そうでなくてはならなかったのだろう。

 だがそんな人間はいないのだ。
 どんな人間でも、その肉体には血が流れているし、きっと涙も流すのだ。
 だから、如月行が泣かない、なんて思ったことはない。


 ただ問題は、俺が一度も泣いた姿を見たことがない、ということだった。
 
 泣かせたいのではない、と思う。
 泣いて欲しいのでもない、と思う。
 が、同時に、行の涙を見てみたいと思う自分も存在する。

 決して悲しませたくない、苦しめたくもないけれど。
 それでも…。

 涙を見せることのない行が、自分には見せてくれたら、自分の前でだけ泣いてくれたなら、どれほど嬉しいだろう、と思うのだ。
 さりとて、実際に目の前で泣かれたりしたら、みっともなく慌てふためき、かける言葉も見つからず、どうしようもなく戸惑ってしまうに違いないのだけれど。


 だから。
 もしも俺のためにお前が泣いてくれるのなら、たった一度だけで良い。
 いつの日か俺が逝くその時に、俺の手を握り、俺の名を呼び、涙を流してくれたなら、俺はきっと何の心残りもなく、旅立つことが出来るだろう。

 それとも…。
 泣いているお前を放っておけなくて、あの世から舞い戻ってきちまうかもしれねえな。
 それならそれで、良いんじゃねえか? なぁ、行。


               おわり

ここまで読んで下さってありがとうございましたm(_ _)m

お題では珍しく仙石さん視点。
このお題だったら、鬼畜エロ攻め仙石…
みたいな話にも出来るのでしょうが、
それは私の能力的に無理(苦笑)。

それにどうやっても行を泣かせることは出来ませんでした。
ああ、修行不足。
もっと妄想しなくては(笑)。
そんな訳で、結局いつものほのぼのオチです。

ちなみに他のお題も、タイトルで誰の話か
何となく分かるのではないかと。
また気が向いた時に書きますが、
リクエストがあれば、それを優先しますよ(笑)。

2005.06.27

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