『たくさんの好きと、たくさんの愛を、お前に』
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「ん……」 カーテン越しに届く朝の光に誘われるように、仙石は目を覚ました。 艦上の生活が長かったために、目覚まし時計など掛けなくても、いつもの時間にきっちりと起きる。低血圧で朝が弱い行とは大違いだ。 それでも、一人の部屋ならばともかく、最愛の恋人と肌を重ねて寄り添って眠った日くらいは、もう少しのんびりと惰眠を貪っていたいと思う気持ちもある。 ただ、それが出来ない性分というだけのことだった。目が覚めているのに布団の中で、いつまでもダラダラしているのは申し訳ないというか、後ろめたい気分になってしまうのだ。 朝早く起きなければならなかった時は、たまにはゆっくり寝ていたいと思ったものだが、いざ、いくらでも眠っていられるようになると、それが出来なくなるというのは不思議なものだ。 仙石は苦笑を浮かべながら、傍らでぐっすりと寝入っている恋人を見つめる。 行自身もおそらくは、のんびり朝寝坊をするような生活ではなかったはずだが、今ではすっかり平穏な日々に慣れたのか、昼過ぎまで起きて来ないこともあるほどだ。 だが、それは行にとっては良いことに違いない。 行が『工作員』ではなく、少しずつただの人間の如月行になっていることを、仙石は確かに感じていた。 「でも……、これは変わらねえな」 仙石は、行の髪をやわらかく撫でながら、つぶやく。 初めて夜を共にした時から、行の寝姿は変わらない。 何かに耐えるかのように、あるいは寒さに震えるかのように、小さく背中を丸めて眠るのだ。 それは、どこか胎児にも似ていた。 あどけなくも見える寝顔が、ますますその印象を深める。愛に飢えた子供はこんな風に眠るらしいと、聞いたことはあるけれど。 それが本当かどうかは分からないが、行自身が寂しい子供だったことは確かで、手足をのびのびと伸ばして安心して眠る生活を送ってこなかったことは事実だ。 だから、行がいつの日か、自然と眠ることが出来るようになるまで。 自分はこの場所を護り続けようと思う。行が安心して眠れる場所、穏やかで暖かくて平和な時間、それに何よりも愛情に満ちた生活を与えてやりたいと思うのだ。 「ゆっくりおやすみ、行……」 おわり |
ここまで読んで下さってありがとうございましたm(_
_)m
今回はラストの雰囲気がちょっと違うかな。 台詞で終わるってことも珍しいですが、 私はいつも書き込みすぎてしまうので、 お題だったら、このくらいのシンプルさで良いのかと。 ダラダラと長く書くのは大得意なので、 短くまとめながら、その中で伝えたいことを伝える、 そんな文章も書いていきたのです。 ま、練習ですね(笑)。 上手くなっている気はしないですが。 どこを生かして、どこを削るか、 取捨選択が難しいなぁ。 そして一番の蛇足がこの後書きだよね。 無意味なことばかり書いてゴメン。 でも、後書き好きなんだよー。 2009.02.21 |