『誰にも言えない、こんなことは。そう、あんたにも』
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──男の身体に残る、深く大きな傷痕。 あたかも記憶が薄れていくように、それもまたずいぶんと薄くなってはいたけれど。 傷の生々しさは失われたとしても、きっとその傷痕は一生消えることはないだろう。 行は仙石の胸に頬を寄せながら、そっと傷痕に指で触れていく。 こうして触れるのも、いったい何度目になるだろうか。 あまりにもしつこく撫でていると、いつしか男の手のひらが自分の頭の上に下りて来て、なだめるようにポンポンと叩くのも、いつものことだった。 「そんなもん触っていて楽しいのか?」 苦笑を浮かべながら尋ねる仙石に、行は顔を上げて応えた。 「痛かったか?」 「いや、そのくらいじゃ痛かねえよ。たまに寒い日なんかはチクチクすることはあるけどな」 「そうか…」 行はうなずきながらも、触れるのを止めることはない。 しょうがねえなぁ、と頭の上で小さくつぶやく声が聞こえたが、構わずに触り続けた。 ひたすら何かの儀式ですらあるかのように真摯に触れながら、行は静かに想う。 …なぁ、仙石さん。 これ、オレの傷だ、…なんて言ったら、あんたは怒るかな。 オレを助けるために、オレを護るためにつけた傷だから。 この傷はオレのもの、…なんて言ったら、怒るかな。 きっと怒るだろうな。 あんたはオレのためだけに戦ったんじゃないもんな。 それとも馬鹿なことを言う、と笑われるかもしれないな。 だから、決してこの想いは口に出すことはないけれど…。 行は仙石の傷痕から指を離すと、その代わりにそっと唇を押し当てた。 ……今だけは、オレの、オレだけの…もの。 おわり |
ここまで読んで下さってありがとうございましたm(_
_)m
うーん、消化不良?(苦笑)。 どうにも描き切れない感じでした。 でも私はいつも描き込みすぎてしまうので、 このくらい、あっさりしている方が良いのかも? いや、良く分かりませんが(爆)。 身体の傷というのは萌えポイントです。 仙石さんはもちろん、行も傷は多いでしょうね。 絵にする時は、面倒なので描かないけど(笑)。 行の傷の話もいつか書けるかな。 2005.11.07 |